PTSD

外傷後ストレス障害(PTSD)とは?

様々な心的外傷(トラウマ)を受け、再体験症状としての反復する想起と悪夢、精神的麻痺症状としての感情反応の収縮や引きこもり、覚醒亢進症状としての不眠や集中困難、生き残ったという罪責感、外傷体験の想起刺激に対する恐怖症状回避および想起刺激に曝露したときの症状再燃などの症状が表れる傷害を言います。

心的外傷とは?

PTSDの原因となる外傷的出来事としては、各種の災害、戦争、テロ、事故、暴力犯罪、性暴力、虐待等があります。具体的には、米国同時多発テロ(ワールドトレードセンター・ペンタゴンに対する旅客機突入テロおよび炭素菌テロ) 池田小殺傷事件、阪神・淡路大震災、北海道南西沖の津波災害、犯罪被害者、地下鉄サリン事件、人質テロ事件、航空機事故、交通事故、熱傷事故、児童虐待などがあげられます。

診断基準について

DSM-IVの診断基準(APA,1994) 不安障害Anxiety Disorder 309.81外傷後ストレス障害Posttraumatic Stress Disorder

(A) 患者は、以下の2つが共に認められる外傷的な出来事によって曝露されたことがある。
1. 実際にまたは危うく死ぬまたは重傷を負うような出来事を、1度または数度、または自分または他人の身体の保全に迫る危険を、患者が体験し、目撃し、または直面した。
2. 患者の反応は強い恐怖、無力感または戦慄に関するものである。
[注]子供の場合はむしろ、まとまりのないまたは興奮した行動によって表現されることがある。
(B) 外傷的な出来事が、以下の1つ(またはそれ以上)の形で再体験され続けている。
1. 出来事の反復的で侵入的で苦痛な想起で、それは心象、思考または知覚を含む。 [注]小さな子供の場合、外傷の主題または側面を表現する遊びを繰り返すことがある。
2. 出来事についての反復的で苦痛な夢。
[注]子供の場合は、はっきりとした内容の恐ろしい夢であることがある。
3. 外傷的な出来事が再び起こっているかのように行動したり、感じたりする。
(その体験を再体験する感覚、錯覚、幻覚、および解離性フラッシュバックエピソードを含む、また、覚醒時または中毒時に起こるものも含む。)
[注]小さな子供の場合、外傷特異的な再演が行われることがある。
4. 外傷的出来事の1つの側面を象徴し、または類似している内的または外的きっかけに暴露された場合に生じる、強い心理的苦痛。
5. 外傷的出来事の1つの側面を象徴し、または類似している内的または外的きっかけに暴露された場合の生理学的反応性。
(C) 以下の3つ(またはそれ以上)によって示される、(外傷以前には存在してなかった)外傷と関連した刺激の持続的回避と、全般的反応性の麻痺
1. 外傷と関連した思考、感情または会話を回避しようとする努力。
2. 外傷を想起させる活動、場所または人物を避けようとする努力。
3. 外傷の重要な側面の想起不能。
4. 重要な活動への関心または参加の著しい減退。
5. 他の人から孤立している、あるいは疎遠になっているという感覚。
6. 感情の範囲の縮小(例;愛の感情をもつことが出来ない)
7. 未来が短縮した感覚(例;仕事、結婚、子供、または正常な一生を期待しない)
(D) (外傷前には存在してなかった)持続的な覚醒亢進症状で、以下の2つ(またはそれ以上)によって示される
1. 入眠困難または睡眠維持の困難。
2. 易刺激性または怒りの爆発。
3. 集中困難
4. 過度の警戒心
5. 過剰な驚愕反応
(E) 障害(基準B、C、およびDの症状)の持続期間が1ヶ月以上
(F) 障害は、臨床的に著しい苦痛または、社会的、職業的またはほかの重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
《該当すれば特定せよ》
急性:症状の持続期間が3ヶ月未満の場合
慢性:症状の持続期間が3ヶ月以上の場合
発祥遅延:症状の始まりがストレス因子から少なくとも6ヶ月の場合。

(表4)ICD-10/DCRの診断基準(WHO、1992より一部改変)
神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害NEUROTIC,STRESS-RELATED AND SOMATOFORM DISORDERS
F43.1 外傷後ストレス障害Post-traumatic Stress Disorder

(A) 誰にでも大きな苦痛を引き起こすような、並外れた驚異的な、または破局的な性質の出来事・状況への暴露(短期的ななことも長期的なこともある)
(B) 侵入的な回想(フラッシュバック)、生々しい記憶、繰り返し見る夢、ストレス因に似た状況や関連した状況に曝されたときに体験する苦痛などによる、ストレス因の記憶のよみがえりや「再体験」
(C) そのストレス因と類似または関係する状況からの現実的な回避、あるいは回避しようとすること、それらは、ストレス因に曝される以前には存在していないこと。
(D) 次の(1)または(2)のうち、いずれかが存在すること
1. ストレス因に曝された期間のうち、ある重要な局面についての部分的な、または完全な想起不能
2. 次の2項目以上によって示される、心理的な感受性の亢進と覚醒の増大による症状 (ストレス因に曝される以前には存在しないこと)
(a) 入眠困難または睡眠(熟眠)困難
(b) 集燥感または怒りの爆発
(c) 集中困難
(d) 過度の警戒心
(e) 過剰の驚愕反応
(E) 基準(B)、(C)、(D)項の全てが、ストレスフルな出来事の6ヶ月以内またはストレス期の終わりの時点までに起こっていること。

治療について

  1. 薬物療法(SSRI、SARI、α2作動薬、β抗薬、非可逆的MAOI、可逆性MAO-A阻害薬、三環系抗うつ薬、ベンゾジアゼピン系抗不安薬、抗精神薬など)
  2. 心理(精神)療法
  3. 認知行動療法
  4. その他